陽気がよくなり、雪や氷が溶けて水になる頃。降るものも雪から雨に変わり、農耕の準備を始める目安とされてきました。
立春を迎えたその日、関東地方では降雪がありました。しかしそれはまだ序の口で、2月8日・14日と記録的な大雪に見舞われました。自然の猛威の前では、人はただただ過ぎ行く時間に身を任せるしかありません。
降雪がわずかに解け始め大地に潤いが戻りだすと、木々や小さな命たちが少しずつ目覚めていきます。この時季(とき)を、いまかいまかとじっと待っていたのでしょう。
遠くのうすぼんやりとした雲間から、陽光がもれ出していました。居残ろうとする冬と、やってこようとする春の駆け引きを見ているようです。
古代中国から伝わり、日本で根付いた農事暦。一年を二十四等分し、その季節ごとにふさわしい名前を付けた自然の暦です。
人々は、植物や生き物、自然の微妙な変化を感じ取り、農業をはじめ暮らしに役立てて来ました。時には、天災などの危険を避ける上でも重要なものでした。自然が営む再生循環と季節の移ろいをからだ全体で感じ、それを読み解いていく。まさに自然と共生してきた証しともいえます。