啓蟄とは、陽気に誘われ土の中の虫たちが動き出す頃のこと。一雨ごとに春になる気配が感じられていきます。
先般の二度にわたる大雪は、思いもよらぬものでした。MURAYAMAでも、やっと日影の残雪が少なくなってきました。まさに「冬来たりなば春遠からじ」の感です。
万葉集には、野の草花を見つめ春の到来をよろこぶ歌がたくさん詠まれているそうです。古より、自然のいきいきした姿に触れると心がうごかされるのが常だったのでしょう。水の面持ちも動き始めたようです。
旧暦2月8日(今年は3月8日)は事始めの日。一年の祭事や農事を始める日で、旧暦12月8日の事納めと対をなしています。この日、みそ汁に芋、ごぼう、大根、にんじんなどを入れた「お事汁」を食べるのが習わしだとか。中身をみるといかにも農事始めにふさわしいものばかりです。
古代中国から伝わり、日本で根付いた農事暦。一年を二十四等分し、その季節ごとにふさわしい名前を付けた自然の暦です。
人々は、植物や生き物、自然の微妙な変化を感じ取り、農業をはじめ暮らしに役立てて来ました。時には、天災などの危険を避ける上でも重要なものでした。自然が営む再生循環と季節の移ろいをからだ全体で感じ、それを読み解いていく。まさに自然と共生してきた証しともいえます。