寒さも峠を越え、初めて春の兆しが現れる頃。日も少しずつ伸びていくのが感じられます。
節分を過ぎれば暦の上では春。しかしまだまだ寒い季節です。この寒さをあえて春寒もしくは余寒と呼び、冬の名残りとして呼ぶことがあります。ここには暖かい春の到来を心待ちにする気持ちがこもっていたのでしょう。
春風をさす東風。もとは中国の陰陽五行の思想で、春は東を司ることから東風と呼ばれるようになったそうです。間もなく大地にも暖かい風がやってきます。
草木が芽吹き、花が咲き、鳥がさえずる姿にフッと気づいたりと、春はちょっとした変化を見つける喜びに満ちています。古来より、人はささやかな日々の移ろいに心動かされてきたのかもしれません。
古代中国から伝わり、日本で根付いた農事暦。一年を二十四等分し、その季節ごとにふさわしい名前を付けた自然の暦です。
人々は、植物や生き物、自然の微妙な変化を感じ取り、農業をはじめ暮らしに役立てて来ました。時には、天災などの危険を避ける上でも重要なものでした。自然が営む再生循環と季節の移ろいをからだ全体で感じ、それを読み解いていく。まさに自然と共生してきた証しともいえます。