暦の上では秋の始まり。しかし、名ばかりの秋かと思うほどの残暑が続きます。一年の平均気温が一番高くなるのもこの頃です。
夏の暑い中、一瞬で正気を取り戻すような西から吹く心地よい涼風を「極楽の余り風」と言うそうです。極楽浄土から余った風が少しだけ地上に吹いてきて、人々の心を和ませてくれる様をあらわしているそうです。
昼間、風にそよいでいたネムノキは、夜になるとゆっくりと自分で葉を閉じていきます。その様は、まるで夜の帳とともに眠りについていくかのようです。
朝夕には、昼間の蝉の鳴き声とは違うやわらかな虫の音が聞こえ始めました。そのわずかな音色に耳を澄ますと、少しずつですが季節が先に進もうとしている事に気が付きます。
古代中国から伝わり、日本で根付いた農事暦。一年を二十四等分し、その季節ごとにふさわしい名前を付けた自然の暦です。
人々は、植物や生き物、自然の微妙な変化を感じ取り、農業をはじめ暮らしに役立てて来ました。時には、天災などの危険を避ける上でも重要なものでした。自然が営む再生循環と季節の移ろいをからだ全体で感じ、それを読み解いていく。まさに自然と共生してきた証しともいえます。