啓は「ひらく」、蟄は「土中で冬ごもりしている虫」の意味。長い間土の中で冬ごもりしていた虫たちが、穴をあけてはい出してくる頃です。
一雨ごとに気温が上がり日差しも徐々に暖かくなってきました。まだ浅い春の訪れを、大地ではフキノトウたちが出迎えてくれていました。
「東風吹かば、匂ひおこせよ、梅の花、主なしとて、春を忘るな」梅の花もようやくほころび始めました。どこからともなく、菅原道真公の歌と共に春の香りが漂ってきます。
春雷が、ひときわ大きくなりやすい季節。これを聞いた虫たちが土中からはい出す様から「虫出しの雷」ともいわれています。モグラたちも、地上の様子が気になるようです。
「余寒いまだ尽きず」といった天候に、年によっては南国でも一時雪になったりすることも。しかし日の長くなり方も急ぎ足で、すでに光の春の季節は始まっています。
古代中国から伝わり、日本で根付いた農事暦。一年を二十四等分し、その季節ごとにふさわしい名前を付けた自然の暦です。
人々は、植物や生き物、自然の微妙な変化を感じ取り、農業をはじめ暮らしに役立てて来ました。時には、天災などの危険を避ける上でも重要なものでした。自然が営む再生循環と季節の移ろいをからだ全体で感じ、それを読み解いていく。まさに自然と共生してきた証しともいえます。