今後の大きな課題のひとつとして、今、考えているのは、「いかに地域環境と調和できるか」があります。森を再生すれば、場所によっては薄暗いところもでてくる可能性があります。そのとき安全性をどう確保するか、という問題も出てきます。誰もが安心して歩けるようにするにはどうすればいいか。管理という側面から見れば、周辺を完全に囲ってしまい、決まった通用口からのみ出入りする形が一番管理しやすいことは間違いありません。しかしそれだと、「周辺とのなだらかなつながり」を十分に追求したとは言いがたいものになってしまいます。
また、このプロジェクトが進むなかで、俯瞰して周辺地域との関係を想像した場合、森につながる道に街路樹を植えるなど、心臓と血管がつながっているような、活きた街づくりに貢献することも可能だと思います。しかし、それは私どもの力だけではなく周辺との協力が必要になってきます。
立川市さんや武蔵村山市さんのマスター・プランを拝見すると、「緑」というものを強く意識されています。また、狭山丘陵から多摩川に至るまでの「グリーンのベルト」の構想もあります。私どもが造営しようとしているものは、そのちょうど中間点に位置しています。周辺で行われる事業と、私たちが行おうとしていることの整合性といいますか、上手な協力の仕方といいますか、それができたときに、いい形が見えてくるのではないでしょうか。
また、仮にそうなった場合予想される問題として、緑が再生され住環境としての付加価値が高まると、治水、風水を根本から壊してしまう高層住宅群が周辺に建てられる可能性もあります。かといって、私たちはそれを全面的に排除することはできません。ですから、「やがてそうなる可能性もある」ということも織り込みながら、地域全体のイメージを描いていかなければなりません。
このプロジェクトは、一直線に何かに向かっていくわけではなくて、いろいろな寄り道をし、曲がり道を通りながら、進んでいくものです。そういったプロセスが非常に大切なのだと思います。そのプロセスの中で、地域住民の方々とのコミュニケーションも深まっていくでしょうし、私たちが思いつかなかったような素晴らしいアイディアが生まれてくる可能性もあります。現実にひとつひとつの問題と直面し、それをクリアしていく。一歩一歩進んでいく。歩み続けることが大切なのだと思います。
(真如苑 プロジェクトMURAYAMA)